ゴアに出会う話18(放浪記115)

放浪記 #115 約3分 1,740字
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兄への手紙

ゴアに到着して暫くすると、この土地はなかなか面白い、お兄ちゃんも遊びに来たらいいのにと思った。

普通はインドを旅行していて面白いと思ったからと言って、実の兄を呼ぼうなんて考えが浮かんだりはしないだろうし、仮に呼ばれてもはるばるインドまで来ることも無いだろう。

だが普通ではなかった僕は、面白いアイデアを思い立ち、兄に葉書を書いた。

住所の所にはJAPANの文字以外には市区町村の名前などは書かず、数字だけを書いた。

この当時に郵便番号が5桁から7桁に変わり、番地と部屋番号だけで手紙が届くようになった。

この新しいシステムを利用して兄をゴアに招待しようと思ったのだ。

ダダイズムという芸術文化が20世紀初頭にあり、スルメや木の葉に文字を書いて、芸術表現として葉書としてやり取りしたりしてたらしい。

それを少し真似てみた。

手紙にはこう書いた。

"日本のように数字だけでハガキの届く規則正しい国がある一方、インドのように何一つ規則的に動かない国があります。未知の体験をしにおいでよ。"

この一枚のハガキと短い文章が兄の心を動かした。

手紙を受け取った直後に、"俺、ちょっとインドに行ってくるわ"と奥さんに言ったとか言わないとか。

なんともファンキーな兄で誇らしく思う。

兄の初海外

手紙を出してから驚くほど短い期間に兄はゴアへやって来た。

これ、兄の初海外。

初めての海外旅行にインドを選ぶとは、なかなか度胸のある話だが、弟が居るうちに行かないと、こんなチャンスは二度と来ないと思ったらしい。

兄は友人のWさんと共にやってきた。

友人も既婚者で、髪の毛は真っ茶っ茶だが一応社会人。

二人共こんなに急によく仕事を休めたもんだし、奥さんも許してくれたもんだと思う。

兄たちを空港まで迎えに行き、少し質の高いホテルを用意した。

僕と兄は一緒には育っていないが、共通の文化的にマニアックな趣味があり、血の繋がった同好の士であり、親友関係だ。

つい数ヶ月前まで週一で会って一緒に音楽を作っていた仲。

久しぶりに会うのがすごく嬉しい。

ラジカセ

僕は音楽が大好きだけど、この旅には音楽を聞く道具を持ってこないと言う選択をした。

それでも音楽に対して我慢ができず、ネパールでラジカセを買ったが、その大きさと重さと音質の悪さに辟易していた。

そこで、兄に頼んでラジカセを買ってきてもらうことにした。

普通なら日本の食材を持ってきてもらうのだろうが、僕には音楽の方が重要だった。

買ってもらったのはソニーのラジカセ、日本製。

横幅が50センチくらいと大きく、旅には全く向いていないが、電池駆動するので野外で使うこともでき、いい音質でなかなかの音量がある。

ヒップホップの黒人が肩にスピーカーを担いで練り歩くようなイメージのラジカセだ。

僕の大量の音楽コレクションから、とっておきの10枚ほどをカセットテープにダビングして持ってきて貰った。

漫画マニア

早速、部屋にラジカセをセットして、いい音質で爆音で音楽をかける。

音楽の街ゴアに居ながらも、自分がこんなにも音楽に飢えていたことに驚いた。

聞き慣れた名曲たちが心に染み渡る。

兄とはお互いにここ数ヶ月の近況を報告し合う。

僕が話すのはチベットを超えてきた旅の話だけど、兄の話は僕たちが大好きな連載漫画の進展状況。

僕が日本を離れている数ヶ月の間にそれぞれの漫画のストーリーはどんどんと進展している。

あと数ヶ月後に日本に帰れば、話はもっと進展しているのだろう。

外国へ旅をすると、知らない間に連載漫画が進展していくので、ヤキモキしながら次巻を待たなくていいことが逆に嬉しかった。

僕のゴアの友人たちは僕と兄との漫画オタクな会話に驚いている。

ここまで息の合った兄弟はそんなにいるものでは無いし、僕たちが一緒に育っていなくて、数年前からの親友関係だと言う話を聞いて尚更驚いていた。

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